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倶楽部報(2023年秋季リーグ戦優勝特別号)

40回目の優勝、完全優勝で飾る

蔭山  実(昭和61年卒 四條畷高)

2023年11月13日

廣瀬隆太主将(4年、慶應高)の完璧にとらえた打球が左翼席に飛び込む。待ちに待った主砲の一撃。先発、外丸東眞(2年、前橋育英高)が好投し、終盤にマウンドを継いだ森下祐樹副将(4年、米子東高)が粘る早大打線に気迫の投球で立ち向かう。2点をリードして迎えた最終回、最後の打者を空振りの三振に打ち取ると、マウンドで飛び上がる森下にナインが駆け寄り、マウンドに歓喜の輪が広がった。2011年春季以来となる完全優勝、そして慶早戦200勝で、通算40回目の優勝を達成した。

慶早戦を前に優勝は慶大と早大に絞られた。勝ち点は慶大が1つ上回っていたが、早大から勝ち点を上げなければ、勝率で優勝を逃す。1勝1敗で迎えた三回戦はまぎれもない優勝決定戦。平日にもかかわらず18,000人の観衆が詰めかけた。追い上げる早大を振り切って優勝を決めると、試合後のインタビューで堀井哲也監督は「死闘でした」。外丸が応援席に向けて「最高で〜す」と声を張り上げると、廣瀬は見守るナインに「ありがとう〜」と応えた。ひと夏を越えて大きく成長したチームの姿があった。

今季は堀井監督の言葉通り「死闘」の連続だった。その中で勝ち点を積み上げられたのは、外丸を中心とした堅い守りと、二死からでも得点に結びつける粘り強い打線があったからだ。

外丸は一回戦と三回戦で先発を担い、8試合で6勝無敗、防御率1.54(リーグ2位)と、まさに優勝投手の活躍だった。リーグ戦前半の関門、法大との戦いでは、三回戦で延長十一回を無死球で零封。この試合を引き分け、続く四回戦でチームは勝ち点を奪う。圧巻だったのはリーグ戦後半、明大との首位決戦。一回戦で完投勝利、三回戦では完封勝利と、優勝を争うライバルを二度も退けた。奪三振は春季の7割に減る一方、走者を背負っても抜群の制球力で後続を凡打に抑え、試合の流れを渡さない安定感を見せた。

その外丸を支えたのが、継投で窮地を救った森下、先発、中継ぎ、抑えと奮闘した谷村然(4年、桐光学園高)と竹内丈(1年、桐蔭学園高)。竹内は法大との四回戦で初先発し、四回途中まで1失点に抑える。その後、勝ち越したが、逆転されて2点を追う六回、二死一塁から吉川海斗(4年、慶應高)が安打で好機を広げ、廣瀬、本間颯太朗(3年、慶應高)の連打で3点を奪って再びリードした。前の回に救援した谷村は3連投の疲れを感じさせない力投で七回以降は二塁を踏ませず、1点差を守りきる。この勝ち点が大きかった。竹内は先発を担うようになり、後のない慶早二回戦では六回まで無得点に抑えて2勝目を挙げるなど、その後の投手起用の転機にもなった。

打線は、チーム打率でリーグトップの2割9分8厘を記録。そのリードオフマン、吉川は打率3割4厘、10四死球、10得点で役割を果たし、廣瀬は本塁打こそ2本に終わったものの、要所で安打を放ち、打線を引っ張った。本間は試合の流れを引き寄せる打撃を見せ、立大との二回戦で2本塁打、慶早三回戦では早大を突き放す本塁打が効いた。

強力打線はまだ続く。栗林泰三(4年、桐蔭学園高)は立大との二回戦から12試合連続安打で、明大との一回戦では初回に強烈な先制打で攻撃を勢いに乗せ、試合を決める大量得点につなげた。宮崎恭輔(4年、國學院久我山高)はリーグ戦序盤から好調で、立大戦で3本塁打を放ち、明大戦や慶早戦でも適時打で勝利を呼び込んだ。齋藤來音(4年、静岡)も12試合で安打を放ち、慶早三回戦は4安打で、終盤に貴重な追加点を挙げた。

下位の水鳥遥貴(3年、慶應高)と斎藤快太(3年、前橋高)は好守、巧打が光り、明大との三回戦で初回に併殺で窮地を防ぐと、その裏の攻撃で二死から連続適時打で先制に貢献。水鳥はリーグ4位の11打点と得点圏で強さを発揮した。外丸も規定打席数に達しなかったが、打率3割7分5厘、3得点と、切れ目のない打線を象徴した。代打陣も勝負強さを発揮する。小川尚人副将(4年、三重高)は法大との二回戦でリーグ戦初安打、初打点となる勝ち越し打、四回戦では同点打を放ち、チームを活気づけた。

閉会式には4年ぶりに6校すべてが参加し、廣瀬主将に天皇杯がしっかりと手渡された。打率4割7厘で首位打者となり、表彰された栗林泰三は16打点、3本塁打もリーグトップで、史上17人目の三冠王に輝いた。宮崎が打率3割7分、13打点で、いずれも栗林に次いでリーグ2位となり、ベストナインには、外丸(投手)、宮崎(捕手)、栗林(外野手)の3選手が選ばれた。閉会式では、4年間のコロナ禍という厳しい時代を乗り越えた4年生部員にスタンドから拍手が送られた。

「リーグ戦優勝」「早稲田に勝つ」という、3つの目標のうち2つを達成したチームは6校の代表として、15日から始まる明治神宮野球大会に臨む。決勝で惜敗した2年前の雪辱もかけ、慶早戦に勝ってリーグ戦に優勝した2000年秋季以来、残る目標、「日本一」を目指す。



優勝の瞬間、飛び上がって喜ぶ森下祐樹副将に駆け寄る宮崎恭輔捕手


優勝の瞬間、マウンド上で喜ぶV戦士たち


天皇杯を授与される廣瀬隆太主将


閉会式に臨む(左から)小川尚人副将、善波力副将、森下祐樹副将、栗林泰三外野手、宮崎恭輔捕手


トロフィーを手にする首位打者の栗林泰三外野手


好投した先発の外丸東眞投手


継投で好投し、胴上げ投手となった森下祐樹副将


先制2ランを放ち一塁を回る廣瀬隆太主将


慶早三回戦で4安打を放った齋藤來音外野手


守備でも活躍した本間颯太朗内野手


攻守に好プレーを見せた水鳥遥貴内野手


慶早二回戦から先発出場して活躍した上田太陽内野手


6校揃って4年ぶりに行われた閉会式

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