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倶楽部報(2019年秋季リーグ戦優勝特別号)

3季ぶり37度目の優勝

庄司 信明(昭和59年卒 九段高)

2019年11月16日

最後の打者を三ゴロに打ち取り、マウンドにいた石井雄也(4年、慶応志木)のもとへナインが駆け寄る。ベンチからも選手たちが飛び出した。互いに抱き合い、跳びはね、喜びを分かち合った。丁度1年前の屈辱を晴らすかのように……。開幕から9連勝。慶大が3季ぶり37度目の優勝を決めた。

優勝争いは慶大と法大に絞られていた。1勝でもすればリーグ制覇を手にする状況で迎えた11月2日の早慶1回戦だった。

慶大は1点を先制されるものの3回、下山悠介(1年、慶応)の中堅手左を抜く適時三塁打で同点とする。6回は主将・郡司裕也(4年、仙台育英)の左ソロ本塁打で勝ち越し。8回には郡司が2打席連続の左ソロ本塁打。瀬戸西純(3年、慶応)も左中間を破る適時三塁打を放って計4点を奪い、結局7対1で圧勝した。

試合後の優勝インタビュー。監督就任以来10シーズン目を迎え、3度目の優勝を果たした大久保秀昭監督は「すぐに下山がいいところでヒットを打ってくれて、主将の郡司が価値ある2発。一番手応えを感じられる優勝だった」と感無量。さらに優勝の要因を聞かれると、「今まで2戦目がなかなかうまくいかなかったが、森田晃がしっかり投げ切ってくれたこと。1戦目を高橋佑が守ってくれたこと、中継ぎの津留﨑、石井がしっかり投げてくれたこと。それに尽きると思います」

今季から2戦目の先発を任された森田晃介(2年、慶応)は、早慶戦前まで防御率0.00(最終結果は1.35)の驚異的記録を残した。特に立大2回戦では1安打完封。明大2回戦でも六大学を代表する明大のエース森下と投げ合い、8回三分の一まで4安打1失点(自責0)に抑え、代打・橋本典之(2年、出雲)のサヨナラ打につなげた。

とはいっても今季もエースは高橋佑樹(4年、川越東)。勝負所の法大、明大、早大との各1回戦で責任回数を見事に投げ切り、大黒柱の働きを十分に果たした。そして、盤石な投手陣を締めくくったのは、津留﨑大成(慶応)と石井の4年生コンビ。津留﨑はチーム最多の3勝をマーク、石井は法大、明大戦で勝ち星を挙げた。高橋佑が言う。「中継ぎ陣は本当に頼りになる。後ろの仲間を信じて投げるだけだった」

9連勝の立役者はまだまだいる。立大2回戦では正木智也(2年、慶応)、中村健人(4年、中京大中京)の本塁打が効いた。二遊間の小原和樹(4年、盛岡三)と瀬戸西は再三の好プレーでピンチを救った。小原は法大1回戦で決勝の2点適時二塁打も放った。そして中村健は、何度となく右翼からの好返球で得点を許さなかった。特に法大2回戦の7回と早大1回戦の2回に見せた本塁憤死のプレーは圧巻だった。

昨秋の早慶3回戦。あと1イニング抑えることが出来ず、3連覇を逃した。その悔しさからスタートした1年だった。1年秋から正捕手の郡司が主将となり、通算113安打を放った柳町達・副主将(4年、慶応)とともに163人の部員を牽引してきた。郡司は打率3割9分4厘、2本塁打、10打点で戦後14人目となる三冠王を獲得。慶大では1996年春の高橋由伸(前巨人監督)以来6人目である。

優勝を決めたあと、早大に連敗。1928年秋以来91年ぶりとなる全勝優勝、勝ち点5の完全優勝はならなかったが、表彰式では今季、六大学連盟の理事長を務める岡浩太郎・慶大野球部長から天皇杯が郡司主将の手にしっかりと手渡された。
そして11月5日、5年10季でチームを3度の優勝に導いた大久保監督の退任が正式に発表され、後任にはJR東日本の堀井哲也監督(昭和59年卒、韮山)が就任することになった。大久保監督は15日から開幕する明治神宮大会で、「日本一」をかけて最後の指揮を執る。

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